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少し寂しげで全てを見透かすようなニーハの眼に見つめられ、月乃は心を隠すかのように眼を逸らす。
しばらく沈黙が2人を包み、その静けさに耐えられなくなった彼女は大きく息を吐いた。
「もういい。帰る」
そう言葉を漏らして屋上を出る。
階段を降りる。
玄関のドアノブを握る。
そして後ろを振り返る。
そこにはニーハがいる。
「ついてこないでよ」
「と言われましても……」
「さよなら!」
月乃はニーハを突き飛ばして自宅に滑り込み、玄関の鍵を閉めた。が、
「と言われましても……」
鍵が外され玄関が開く。
「あんた、こんな事も……」
月乃は諦め口調で呟いたが、ニーハの手元を見て言葉が途切れる。
ニーハは手に持つ針金を見せて笑顔で答えた。
「あ、はい。鍵開けは得意分野でして、この構造なら一瞬です」
「ピッキングかよ!」と思わず叫びそうになるのを堪え、月乃は家に上がる。
ニーハについてはもう諦めた。
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