十六夜レモネード

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ーー最後に美しい月を見よう。その光の中で眠ろうーー 彼女はそう思い、中秋の名月を待った。 彼女が待ち望んだ日。 彼女はマンションの屋上で空を見上げた。 ーーやっと、眠れるーー と、思ったのに、実際に目の当たりにした月は美しすぎて、眠る事はできなかった。 ーー明日にしようーー 握りしめていたモノをポケットにしまい、側に置いておいたレモネードをあおる。 しゅわっと口の中で酸味と甘みが弾けた。 翌日。 彼女はマンションの屋上で手首を切った。
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