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彼女は目を見開いた。
目の前に広がっていたはずの街が消える。
高層マンションの蛍光灯も、動き回る車のライトも、街をかたどる街灯も、全て消えて月の白っぽい明かりが何もない世界を包む。
本当に何もないわけではない。
地面から突き出した水晶もあれば、どこからか落ちてきたらしい星らしき塊もある。
空に浮かび上がっていく泡の中には、太陽のように暖かな光も漏れていた。
その泡を追って見上げると、人がいた。
背中に翼の生えた人が、スローモーションのようにゆっくりと落ちてくる。
落ちてくるのを彼女は見ていた。
ただただ、見ていた。
そして、地面に飲み込まれるように落ちて行くのも、ただただ見て……
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