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左手首には確かに傷があった。
だが、先ほど深く切ったはずなのに、傷は塞がっており血の影すらない。
傷付けてから数ヶ月は経っているような傷痕しかない。
「何で!?どうしてっ!?」
月乃は喚きながら、まだポケットに持っていたカッターで何度も何度も手首を切ろうとする。
だけど、今度は傷痕さえ付かない。
「あんた、私に何をしたの!?これもあんたの仕業なの!?」
「いえ、僕は貴女の傷を塞ぎ、貴女の心をこの世に繋ぎ留めただけです。そこで全ての力を使い果たしました」
「じゃぁ、何で私の身体に傷さえ付かないのよ!」
「それは神々のお力かと」
「神々?神様が私を助けようとしてるって言うの?こんな最悪な環境に陥れといて、生き続けろって言うの?!」
月乃の悲鳴にも近い叫びを、ニーハは目を逸らさずに受け止め、そして告げた。
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