第1章

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
光が全く差し込まない真っ暗な闇の中で、何かが動いた。 いる。 あたしは息を殺し、獲物の足音に耳を澄ます。 獲物はあたしの接近に気がついていない。 足音を忍ばせそっと近寄り、飛びかかる。 獲物の頭と胴体を鷲掴みにして、その首筋に噛みつき肉を引きちぎった。 引きちぎった肉を咀嚼し飲み込む。 美味しい――! 久しぶりのご馳走。 流れ出る血を口で受け止めて飲む。 肉を引きちぎった傷口に口を当て、血をチューっと吸う。 それから胴体に歯を立て、骨ごと肉を噛み千切り咀嚼。 バリバリと音を立てて肉と骨を咀嚼する。 以前は、あたしが狩った獲物を取り上げようとする奴らがいだけど、今はいない。 みんな死んで、あたしの腹の中に収まっている。 だから少しぐらい音を立てて獲物を食らっても、横取りされる心配は無い。 胴体と頭の肉を骨ごと食い千切り、バリバリ咀嚼し飲み込む。 最後に残った尻尾をチュルンと啜り込んで、手や指に付着した獲物の血や油を舐めとり、お食事タイムが終わる。 あ! また全部食べちゃった。 誰に教わったか忘れちゃったけど、獲物の肉をほんの少し残しておいて、次の獲物を狩る餌にするように、って言われたんだっけ。 でも残さなくても、次の獲物が近寄ってくる音が聞こえてくる。 あたしが食べた獲物の血の匂いに誘われて、不用意に近寄ってきた奴に飛びかかり、頭と胴体を押さえつけ頭を捻った。 ゴキン! って音がして獲物は静かになる。 今、一匹食べたばかりだから、これは塒に持って帰って、後で食べよっと。 核戦争が始まった時、偶々地下深く走る地下鉄に乗っていたため、難を逃れる事が出来た人達の生き残りであり、人類最後の生き残りでもある少女は、ネズミの尻尾を口にくわえ、四つ足で塒に向けて歩みさった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!