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動揺した私の目は、笑えるくらいに宙をさまよっていたことだろう。
思わぬ共通点で専務と私が繋がっていた事実を知って動揺したのもある。
けれど、一番動揺したのは専務のとてつもなく熱い視線で、静まれといくら念じても波立つ鼓動は収まらなかった。
あんなイケメンに運命的なストーリーを紡がれて、好きだなんて真正面から告白されて鉄面皮でいられる女子がいたら是非ともお目にかかりたい。
此処が飛行機の中じゃなくて別の場所とかでだったら、どうなってたことだろう。
宿泊先のホテルとかで、もし先程みたいな感じで見つめられたりしたら。それでもって、迫られたりなんかしたら。
果たして私は、専務を拒みきれるのだろうか。
……そうですよね。
はい、すみません。
私、原田奈津はこの間プロポーズをお受けしたばかりでしたね。
それなのに、何でこんな気持ちがぐらついてるのよ。あり得ないあり得ない。
きっと、1ミリだってぐらつきなんてあってはならないことだ。
世間的に不倫だの浮気だのに特に厳しい今のご時世にあって、私という人間は何を思ってしまってるんだろう。
ダメだと分かっているのに、専務のただならぬ色気につい負けてしまいそうな自分がいる。
違う違う違う。
私は悠真が1番に大好きなわけであって、専務はただの会社の上司に過ぎない。それ以上でもそれ以下でもあってはならない。
はああぁ……。
よりにもよって、どうしてウルトラハイスペック人間の専務が、平凡OLの私なんかを好きになるの。
これから後のことを考えて大きな溜息をつきつつ、とりあえず一旦自分も眠ることにした。
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