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老若男女問わずモテるといえば、きっと悠真もそうなんだろう。
見る人全ての心を奪ってしまうあの佇まい。専務が動だとすれば、悠真は静という感じ。
まるで、太陽と月みたいな2人。そして私と2人との距離も、本来ならばそれくらい遠くに感じてもおかしくない。
辛い失恋を経験した私に寄り添ってくれた悠真は、本当に月のような人だ。
彼が私に向かって静かに笑いかけてくれる姿を思い出すだけで、幸せで温かい気持ちになれる。
胸の高鳴りも感じるけれど、それと同時に安心出来たり心から信頼出来る人は、きっと私にとっては悠真なのだ。
専務も確かに魅力的な男性だけれど。
私の斜め前で、提携しているソフトウェア会社の役員の人達と話をしながら歩く専務の背中を見つめながら秘かに思う。
悠真……会いたいな。
飛行機を降りてから怒濤の1日をなんとか無事にこなし、専務と一時宿泊予定のホテルへと向かうことになった。
車窓から見えるお洒落なニューヨーカーや街並みを、時差ボケからくる疲れで半分寝ぼけ眼で眺めていた。
やがて宿泊先のホテルらしき建物の前へ車が停まり、外へ出てから私は呆然とした。
「専務……このホテルに泊まるんですか?」
「当たり前なことを聞くな。さっさと来い」
眼前に広がるのは、パソコンでニューヨークについてあれこれ検索していた時に見つけた、ニューヨークで最も格式のある高級ホテルだった。
庶民たる故なのか、目の前に広がる高級感溢れる建物に圧倒されて、足が出ない。
こんな安物のオフィススーツで入った日には、宿泊を断られてしまうのではないだろうか。
そう思ってしまうくらいに、エントランスの向こう側に見える宿泊客らしき人達は、皆ブルジョワ感が漂っている。
唾を飲み込んで固まっている私を見て、専務はやれやれという感じでため息混じりに戻ると、いきなり私の手を掴んだ。
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