ニヒルな坊主②

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ただ、ニューヨークでのパーティー用のドレスを買いに行こうと思い立ったものの、どういうドレスを着ていけば場違いにならないのかが私には分からなかった。 頭を悩ませている私に助け船を出してくれたのは、意外な人物だった。それは、マリエさんだった。 「秘書として同行する原田さんに変な格好をされたら、専務のみならず会社の品格まで下がりますから」 キツい言葉をかけつつも、彼女は自分が普段利用する高級ブランドのセレクトショップにと私を連れて行ってくれた。 豪華絢爛なパーティードレス用コーナーで、店員さんが持ってきてくれたドレスを試着してマリエさんが吟味すること、およそ2時間。 「こんなところかしらね。これなら、専務の足を引っ張ることもないでしょう」 想像以上に時間がかかった試着と、その都度何か違うとマリエさんに溜息混じりに首を振られる精神的苦痛により、私の心はげっそりとやつれていた。 「あ、ありがとうございます……」 一流女性のドレスコーデにかける時の使い方、恐るべし。 ドレスにコートに靴、バッグにアクセサリー。 自分へのご褒美なんかも特に買わずに、貯金ばかりしていた私からすればかなりの大出費だ。 そりゃ、今まで亨との結婚資金の為にと思って、余計なものも買わずに必死に貯めてきたんだもんね。 一気に羽ばたいていった諭吉先生の数を思い出す度、未だに溜息が出る。 まぁでも、そのお陰で恥をかかずに済む訳なのだから。 私もアラサーのいい歳した働く女だ。 自分を磨くことにだって、たまにはお金を使っても悪くないと思う。 だって、人生は1度きりだし。 デコルテラインがはっきり出る大人な感じの黒のドレス。 こんなに大人っぽいドレスは着慣れないけれど、アメリカのパーティーでは当たり前だというマリエさんの意見に今回は乗っからせてもらうことにした。 髪をまとめ、鏡に立って自分のドレス姿を確認する。 「……悪くないよね?」 何度も色々な角度から自分をチェックした後、よしと意気込んで私は部屋を後にした。
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