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こんな鉄の塊が空を飛んでいるなんて、有り得ない。更に言うならば、その鉄の塊の中にいる私自身が、もっと有り得ない。
飛行機は空へとどんどん上昇していくのに、私の血圧は瞬く間に急降下しているような気がする。
専務に、海外出張へお前を連れてへ行くと申し渡されてから約二週間後。私、原田奈津は今、本当に専務の海外出張のお供をしている。
只今、絶賛後悔中である。
……。
ーーそれにしてもだ。
私のようなしがない只のOL風情が、専務と並んでファーストクラスのシートになど座っていて果して良いのだろうか。
大企業の御曹司である松永専務の秘書なんて言っても、私はマリエさんのように、どこかの令嬢でもなければ、思わずファーストクラスに乗せたくなる程の美女でもない。
自分で言うのもなんだけど、ごくごく普通の一般家庭で育った、どこにでもいるような見た目の女に過ぎない。
私の場合、精々エコノミークラスか、よくてビジネスクラスに恭しく座らせて頂くのが妥当なのではないだろうか。まさか自分の人生において、飛行機に……しかもファーストクラスに乗るだなんて。
ある出来事があったせいで、余程のことがない限り、飛行機に乗ることはもうないと思っていた。悠真のお祖母ちゃんには、自分の想像の域で海外旅行行きたいとかってつらつら色々と語っちゃったけどさ。
……しかし、この贅沢な空間は一体何。
背中や足は伸ばし放題に伸ばせるし、客室乗務員から施されるサービスは有り得ないくらいに待遇良いし。食事も、普段滅多にお目にかかれないような高級フレンチだし。
ついでに、空港内だけでなく、機内にまで専用ラウンジがあるだなんて知らなかった。
搭乗する時に、一番最初に専務と飛行機へと乗り込んだ。ファーストクラスの乗客が一番最初に乗り込むらしい。
けれど、私達の他にファーストクラスへと乗り込んだのは、他に二人しかいなかった。いかにもお金持ちそうなおじさまとおばさまの二人だ。
こんな不景気でも、ファーストクラスに乗る人が、同じ人間でもいるのだなと染々感じてしまう。私も今はそのうちの一人なのだけれど。
そうは言っても、会社の経費で行く訳だから、私自身がファーストクラスに相応しいお金持ちの人間という訳でもないしね。
……。
後で身体で支払え、なんて言わないよね?
……いやいやいやいや。
あり得るっ。
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