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「専務……何で私までファーストクラスなんですか?」
「今更分かりきったことを聞くな。俺がお前を傍に置いておきたいからに決まってるだろ」
わおっ。
松永専務の直球ど真ん中な言葉に、今度は一気に心拍数が上昇する。
こんな短時間のうちに、心拍数が大幅に上がったり下がったりして……ニューヨークに着く頃には、エコノミー症候群とかで、天国に召されてしまっているのではないだろうか。
ーーあ、此処……ファーストクラスだった。
専務には、悠真にプロポーズされてそれをお受けしたことは既に伝えてある。
けれど、このどうしようもなくマイペースな俺様専務は、私がどこの馬の骨と結婚しようが無問題〈モウマンタイ〉らしい。
きっと、私が専務に強く言えないのがいけないのだろうけど。
伝えて返ってきた言葉が、俺が好きならそれで別に構わない、だった。
いや、全然良くないんですけど……。
いい加減、そこは諦めましょうよ。
貴方のような非の打ち所のないハイスペックイケメンに毎度言い寄られて、それを断り続ける私の身にもなって下さいよ。
エンゼル奈津とデビル奈津とのデッド・オア・アライブな攻防戦が、その都度繰り広げられているんですよ?
すっかり顔を紅潮させている私を、専務が思いも寄らぬ優しい眼差しで見下ろしながら呟く。
「……思ったより、辛そうじゃなくて良かった」
「え?」
思わずきょとんとするも、専務がお約束の言葉を私に投げかける。
「アラサーがきょとんしても、可愛くないと言ってるだろうが」
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