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またそんなこと言う……どうせ冴えないアラサー女ですよ、私は。
でも、思ったより辛そうじゃなくて良かったって何のことだろう。
「専務が、どうして私の体調を心配してくれ……下さるんですか?」
二人きりの時は、別にちゃんとした敬語は使わないでも良いと専務から言われている。
けど、マリエさんから飛行機に乗る前にきつく言い渡されちゃったしなぁ。
「最後にもう一つ。……原田さん。あくまでも、専務と貴女は上司と部下、雇用主と従業員の関係です。専務と喋る際には、もう少し言葉遣いに気をつけるようにして下さい。言葉の馴れ合いが、色々な間違いの元ですよ。良いですね?」
これはあくまで仕事よ。
松永専務とフレンドリーにさくさく会話して、変に旅行気分味わったりするんじゃないわよ。
そんなマリエさんの本音が、一瞬だけれども垣間見えた気がした。
「……いつか話してやると言ってたな。俺がお前を好きになった理由。そろそろ話してやるとするかな」
そう言われて、以前に寝物語にでも聞かせてやると言われつつ、結局教えてもらえなかった話題が何故かこの場で突如持ち上がり、私は慌てふためいた。
「せ、専務。その話はもう良いっていうかその……ありがた迷惑な気持ちは封印しておいて貰えませんか。永遠に」
……あっ、マズイ。
パニクり過ぎて、ありがた迷惑って言っちゃった。
「何がありがた迷惑だ、阿呆め」
「あだっ」
原田奈津、二十九歳。アラサーと呼ばれる、女子として中間管理職なお年頃。
空の上でも、まだまだ失言で専務にデコピンされる今日この頃です……。
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