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着信履歴に残されていた名前は、ほぼ悠真と専務の名前で埋め尽くされていた。
悠真とは有給休暇中に会えたけれど、専務に会えたのは、有給休暇が終わって再び出社してからだった。
自分のマンションに帰り着いてから、専務の物凄い数の着信履歴を見て、一気に血の気が引いた。
慌てて連絡をしたものの、困ったことに専務に繋がらず。悶々しながら、久し振りに会社へと行ったらだ。
秘書室に入るなり、マリエさんにゴートゥー専務と言われ、息をつく間もなく専務室へと向かう羽目になり。
そこには、恐ろしいくらいに爽やかな笑顔の専務が待ち受けていた。
突然の長期有給休暇で随分心配したこと、そして今回の出張の件を言い渡された次第だ。
私はどうやら、専務には物凄く心配してもらっているみたいだ。
専務は今は自分の席について、どうやら眠っているらしい。
元々、睡眠を取る時間がないくらいに普段は忙しい人だから、せめて空の上にいる間くらいは全て忘れてゆっくり眠ってほしいと思う。
でも……専務もこの空の上だと、余計に考えたくもないことを考えてしまうんだろうな。
さっき、専務からある話を聞かされた。
それは、別れた恋人が飛行機事故に遭い、還らぬ人になってしまったという話だった。
奇しくもその飛行機事故は、私の初恋の男の子が乗っていた飛行機と同じもので。私の初恋の男の子も、専務の別れた恋人と同じく還らぬ人になった。
私はその飛行機事故以来、飛行機に乗りたくないと思うようになったのだ。
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