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専務の恋人は、夢を叶える為に専務と別れる道を選び、飛行機に乗った。
いつ帰れるとも分からない恋人が選んだ道に、専務は当初理解を示すことが出来なかったらしい。
お互い、心にもないことを言っての喧嘩別れだったと専務は自嘲気味に笑っていた。
専務は恋人のことを心から愛していたみたいで、突き放したことを即座に後悔していたとも言っていた。
仕事が一段落したら、恋人の元へと行って謝ろうと思っていたようだ。
それなのに、その時の運命の歯車というものは残酷すぎた。
そう思っていた矢先の信じられない出来事に、きっと専務は目の前が一瞬にして真っ暗になったに違いない。
私も、そうだったから。
私の初恋の人は、夏休みにホームステイする為に旅立った。
事故当時、大々的にニュースなどで報道された。私が知ったのは、夏期講習を終えて夕方帰宅してからだった。
初恋の人の名前は、マコト君。
同じクラスで、席は私が前で彼が後ろという並びだった。だから、自然と会話する機会が多くて。
バスケ部のキャプテンだった。爽やかで格好良くて、話していて楽しかった。
ノートを貸したり、本の貸し借りなどをして彼と接するうちに、いつの間にか好きになっていた。
事故のあった前日は登校日で、彼からお土産は何が良いかと聞かれてチョコレートが良いなどと他愛ない話をして別れた。
最後に彼の姿を見たのは、校門前だった。
男友達と帰る彼の後ろ姿は、今でも覚えている。
気をつけてねと私が手を振りながら言うと、彼は応えるように手を振り、笑顔で頷いた。
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