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我が校、炉目炉学園は最寄り駅から十分かそれ以上かかる。
自転車を利用するには近すぎるし、それ故にバス代も勿体無い。
何より徒歩以外の移動手段で登校してくる生徒もいない。
だからこそ、特に理由も無く何か恥ずかしい。
当然、近所に住んでいる生徒もいるわけだが赤神にそれを問う事は忘れていた。
緊張していたのだろう、異性と帰る事は滅多に無かったからだ。
だからこそ赤神は話題を切り出す事に必死になっていた。
沈黙を恐れていたのだろう。
「何で……ゾンビ愛好部に入部したいと思ったの?」
テニスコートでテニスを楽しむ少年。
大きな橋を渡っていると、土手にそんな光景が広がっていた。
「幼い頃、ゾンビ映画を見て興味が沸いたんだよ」
「興味?トラウマの間違いでしょ?」
「トラウマが興味へと変わったよ。案外似て非なるものかもな」
「ハッハッハッ、アナタが一番変わってるよ。面白いね」
「い、言い返すようだがお前も似たようなもんだろ。わざわざ愛好部なんて立ち上げるんだから」
「帰りたくないから」
「……」
赤神は川を眺めながらそう告げた。
「あの両親がいる家に帰りたくない。あの人達の脳は停止しているから」
「私がいくつになっても……きっと永遠に」
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