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「私が12歳の時、兄が亡くなった」
「兄と言っても義理の兄だけどね。母はもっと幼い頃に一度離婚してるから……」
「兄はやさしい人だった。妹思いで頭も良くて力もあったし友達も沢山いた、でもその12歳の夏」
「お盆の時期、兄は友達と旅行に出掛けたの」
「両親も私も何も不自然に思わなかった。その年は3人で里帰りする事になった」
「父の実家は工場を営業してて、その時期は夏期休業してたみたいで閉鎖されてた」
「私は興味があったの。中がどうなっていたのか……それで父に頼んで鍵を貸してもらったの」
「ギシギシと鳴り響く赤茶色く錆びた扉を開けると、むわっとした熱気が覆って……それと同時に鼻を突いたのは強烈な腐臭」
「初めは動物が迷い込んで死んでるのかと思ってるけど、明らかにそんな次元の臭いでは無かった」
「兄だった」
「それは人間の本来の形を成して無かった。夏という時期もあり、太陽の日射で炙られた屋内は40度以上の高温になっていたのもある」
「体は腐敗によって膨張して、虫が集り、あまりに……無惨な姿と化してた」
「……」
『待てよ』、そんな言葉が脳裏によぎった。
「……何で旅行に行ったはずの兄が?」
「誰にもわからない。わからないから今日の今までずっと両親は『喧嘩』してる」
「何度も裁判になった。母は父が兄を嫌いだから殺したと言ってる」
「兄の遺体に傷は無かった。警察が言うには閉じ込められて死んだって……」
「両親はずっと争ってるの。ずっと……そしてこれからも」
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