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「よぉ!夢の中から脱出できて良かったな!」
休み時間、金髪のチャラ男が机の前に座った。
小学生の頃からの友人、陽炎拓海。
通称タクヤンである。
「死にたくないー!死にたくないー!」
タクヤンは暴れまわる演技をした後、指をさして高笑いする。
その様を見て後ろに座っていた女子がクスクスと笑う。
「頼む……ジュースを奢るから止めてくれ」
「はっはっ何がやねん!お前既に笑い者やないけ……って言うのは冗談として」
タクヤンは真剣な表情で自分を見た。
「何か辛い事あったんか?それとも体調が優れんとか?」
「気を使ってくれて悪いけど、本当にただ悪夢を見ただけだよ」
「どんな?」
「……」
夢を思い出した時、背中が汗で滲んだ。
「黒髪の少女に噛みつかれた」
「肩を食いちぎられて大量に出血したんだよ。その血の臭いも……音も、痛みも鮮明に感じられたよ」
「でもお前の肩は大丈夫やんけ」
タクヤンは笑みを浮かべてそう告げた。
「夢の中でどんな目に合おうがお前は絶対に無事や。所詮夢は夢でしかない」
直後、デコピンを額に当てる。
「いたっ」
「お前が経験したその苦痛はこれにも劣るって事やな。とっとと忘れてまえ」
「まっ、授業中に寝てんのが一番アカンけどな。ぷぷっ」
「ぐうの音も出ねぇよ……ただ、夢の中とはいえ女の子に抱きつかれたのは良かったりするんだがな」
「何……だと?」
タクヤンは顔をしかめる。
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