0人が本棚に入れています
本棚に追加
カウンターは割と目に付く場所にあった。
カウンターというよりは、幅の広い家具調机のような趣。
店番と思しき女性が座っていた。
見た目は少女と言っていい外観だと思うのだが、しかしその雰囲気はどこか年月を感じさせる老木のよう。
こちらには目もくれず、机に突っ伏すような真剣さで書き物をしている。その割にあまり筆は進んでいないようだが。
「…なあ、ちょっと」
どうするべきなのか、散々迷った末に声を掛ける事にした。
ビクッという擬音が出そうなほどの反応を示し、今しがた自分の中で落ち着いた雰囲気と評した少女は、警戒する小動物のように顔を上げる。
顔立ちはどこか幼い、ように見える。
髪が長いのは分かっていたが、前髪もまた長い。ほとんど目を隠している。強いて言うなら、そのせいもあって大人しそうな、悪く言えば陰気そうな少女。
少しだけ唖然としたような様子を見せ、しかしすぐに気を取り直したようにこちらに向き直る。
「…こんにちは」
無難な挨拶を返してくれるのだが、自分と周囲の状況が状況だけに、どう返していいのか分からない。そもそも店ならいらっしゃいませではないのか。
実は店じゃなくて、どうしてここが店だと思ったのかと言われると一言もないのだが。
最初のコメントを投稿しよう!