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それでも会話になるのなら、何か分かるかもしれない。質問してみることにした。
「ここは、どこなんだ?」
少し考えるような素振りを見せ、少女は答える。
「分かりません」
恐らく自分は奇妙な表情を浮かべたのであろう、申し訳なさそうに、すみません、と小さく付け加える。
「…俺は、どうしてここに?」
相手に聞くことではないと分かっていたが、それでも声に出てしまう。向こうが知るわけがない。
しかし、こちらの質問には答えが返った。
「――……亡くなったからだと思います」
本当に申し訳なさそうに、悼むような表情で、わずかに前髪の隙間から覗く瞳を伏せて、少女はそう言った。
どんな顔をしていたのだろう。
少女は俯いた視線を上げ、静かにこちらを見つめる。じっと。
「思い出せませんか?」
靄がかかったような記憶を、言われたとおりに探る。ふわふわとしていたものが、彼女の言葉に反応したように霧が晴れ、あるいは形を帯びていく。
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