ちらし寿司

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「今日、小六の妹が運動会でね……」  その台詞を聞かなかったなら、おにぎりやサンドイッチを想像していた俺は、引いていたかもしれない。 「うちはお祭りごとがあると、ちらし寿司を作るの」  トートバックからウェットティッシュを取り出しながら、彼女はそう言っていた。  学校を休みがちの彼女の手は、異常なくらいに白かった。  午前中にまわった水族館。  大小、様々な魚が泳ぐ大水槽までたどり着くと「綺麗……」と呟くように、彼女は言った。  青白いライトの下、彼女は嬉しそうに魚達に視線を走らせていた。
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