ちらし寿司

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 二階から、足音を弾ませ娘が下りてきた。 「ちらし寿司だ!」  娘はそう言ったかと思うと、それをつまみ食いしようとした。 「駄目よ。仏壇に御供えしてから」  妻はそう言うと、二枚の小皿にちらし寿司を取り分け娘に差し出した。  仏壇の前に座る祖母に「はい、おばあちゃん」と、娘はその二皿を手渡した。  仏壇に飾られた二枚の遺影。  昨年亡くなった義理の父親の写真の隣には、あの日、水族館の入り口で撮した彼女の笑顔が飾られていた。                了
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