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「瑠里さんは心配しなくても大丈夫ですよ、それに本体の事気にしてるなら、家電店に行けば買えます」
「すいません、本体にVRつけるといくらするのか気になって。でも旅行体験出来るゲームは私も欲しくなりました」
「ぷっ、そっちの心配かぁ、今度一緒に見に行きましょうか」
ワオンさんは肩に腕を回したたまま話をしていたが、不意に視線を感じて後ろを振り向いた。
『……気のせいかな?』
いたのは並んでいるカップルだけで、二人の世界に入ったように近づいて話をしている。
人も沢山いるし、視線を感じたところで不思議ではない。
ただ何となく嫌な予感がして、ワオンさんの腕をさり気なく外そうとした。
「ダメですか?人も多いし近づいてないと百合さん小さいから迷子になりそう」
「子供扱いしないで下さいよ、危険なのは瑠里ですよ?興味があるとフラフラして……じゃなくて!視線感じるんで離れた方が良さそうです」
ちょっとドキドキしたのもあるが、まだ誰かが見ているような気がする。
リーダー達が車を降りたかもしれないし、ワオンさんも殴られる対象になりかねない。
「それにしても思ったより色んな人が来てますね、モデルみたいにオシャレな男性もいるし」
肩の手が外されホッとしていると、今度は腕に手を回し何事もないように会話している。
『手の位置下がっただけじゃん!』
振り解くのも感じ悪いが、彼に被害が及ぶのも申し訳ない。
「ワオンさんもお洒落じゃないですか、背も高いし視界が良くて羨ましいです。リーダー達もしかして降りて来てませんかね」
特に異常もないので連絡をしてないが、気が短いリーダーはもうここに来ている可能性がある。
ワオンさんに連絡をしてもらうタイミングで背後に回り腕を外す事に成功した。
「来てないみたいです、状況を説明したら降りてくるって言ってました」
「そうですか」
気のせいだった事が分かって安心していると、私達の少し前に並んでいた瑠里・弦ペアがVRをつけていた。
瑠里の背中をじっと見つめていたが、戸惑いながらも楽しそうに操作している。
次の番のカップルも早く順番が来ないかと手を繋いで待っていた。
『たまにはこんな時間もいいかも……』
呑気にそんな事を考えていると、ワオンさんの言葉で急に現実に引き戻された。
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