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恐る恐る下を向くと無言の赤ちゃんと目が合う。
イメージでは背中に背負う感じだったが、そういえば最近は私達の世界でも、前面に赤ちゃんを固定している若奥さんをよく目にする。
目が届くのでこの方がいいのかもしれないが、イタチ人間の赤ちゃんのあやし方なんて全く分からない。
でも乳臭いと思っていたのに、ローズのいい香りと胸からお腹にかけて赤ちゃんの体温が伝わってきて妙に安心感がある。
「なんかいい匂いがします……」
「あぁこの辺のベビーグッズはローズの香りがするからね」
瑠里もクンクンと匂いを嗅ぐと、私達よりも女性らしい香りがすると笑いだした。
子供も一緒に饅頭を食べていると、まーちゃんは少し離れた場所で作業を始めた。
「ダメ息子を精神的に鍛え直してもらおうと今カラスの世界に奉公させててね、その人が釣りが好きだから様子を見に行く時は浮きを作って行くんだよ」
お爺ちゃんが川で釣りをする時の為に浮きを作っていたので私も要領は知っている。
最後に漆で色付け作業を手伝ったり、お婆ちゃんが新聞の広告で花瓶等もよく作っていた。
他にもお爺ちゃんに藁草履の編み方も聞き挑戦したが、妹はすぐに飽きて外で木登りをしていたのを思い出す。
「それ川釣り用の浮きですよね?私もお爺ちゃんのを色付けした事があります」
「あらそう?やってみる?」
まーちゃんは赤ちゃんを妹に固定すると、解放された私は色付けの手伝いをしていた。
懐かしいし集中出来るし、意外と楽しんでいると赤ちゃんが泣きだし、まーちゃんに言われ瑠里は哺乳瓶でミルクを与えていた。
「他にも新聞のチラシで作る花瓶とか、草鞋とか……祖父母宅は山奥だったのでコンビニや遊ぶ場所もなかったので」
「チラシの花瓶?何それ?」
まーちゃんが興味を示し、チラシをかき集めて持って来た。
他にも二スやのり等もあるかと聞いて、カッターでチラシを正方形に切り始めた。
角から丸めて細い棒をいくつも作り、それを筒状に編んでいき花瓶の形にする。
色を付けたら仕上げに二スを塗って乾かしたら完成。
中に筒を入れると花瓶をしても使えるが、お婆ちゃんは紙で作った花を入れて楽しんでいた事も話した。
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