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「緊張したぁ、あんな感じだと思ってなかったし、股も見られたよね?」
「うん、股どころか全身だよ……でも肌はスベスベしてない?」
腕を触りながら妹は首を傾げている。
「そんな気もするような……しないような。徐々に抜け落ちるみたいだし様子見かな」
母に車を借り近くの100円パーキングに停めていたので、今までのようにバスターミナルまで歩く必要はない。
免許を取ったり、軽自動車を買い替える事が出来たのも仕事のおかげだと改めて感謝していた。
休みの日に足を伸ばす回数も若干増えたし姉妹揃って『やってみたいチャレンジ』も達成出来た。
その一つが今日の脱毛だ。
ただ、今の仕事を続けて行くには『まず死なない!』という女子の働く職場とは思えない過酷な条件が付きまとう。
先日行った合宿ですら半殺しの目に合ったばかりだ。
「最近生きて帰れると有難いと思えるようになってきたけど、もうちょいレベルアップしたいよね」
「分かる!お守りで能力増やせてる割に使いこなせてないというか、例えるなら最新スマホなのにガラケーでいいんじゃね?って感じ」
言葉選びは別としても言わんとする事はよく分かる。
容量大きいのに殆ど空きで勿体無いと同じような事を思いついていた。
「一旦家に戻ったらトレーニング行く?」
「うん、刺繍に色がついた人はイザリ眼のレベルも高くて、せっかくの犬螺眼も陰が薄かったもん」
ドライブがてらに仕事の話というか、車という密室が増えたおかげで話題に上る数も増えた。
「私は忍者探偵だからそっち系の技を磨きたい」
「私は犬螺眼と朧に託された力のレベルを上げたい」
合宿以降は二人とも強くなりたいモード真っしぐらで練習あるのみと職場に向かう。
徒歩五分の道のりでも、上着が必要な位気温が下がっていた。
郊外でもここは気温が低めなエリアなので、寒がりの私達には嫌な季節になってきた。
受付ではブラウスにカーディガンを羽織った木村さんが笑顔で迎えてくれる。
つなぎに着替えると指示された部屋に入って、まずはイメージトレーニングに励んだ。
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