黒い影

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「普通の釣りには代用効かんが楽しいじゃろ?」 「えぇ、すっかり楽しみました、瑠里が好きそうですよ」 パネルを操作すると水は消え、社長はコーヒーとパンを運んでくれ休憩をした。 いつも影と戦うトレーニングばかりだったので、今日のパターンは新鮮だった。 「刺繍に色がつくと敵のランクも上がるし、様々なシュミレーションしておかんと執行出来ん。特に百合さんは攻撃メインの能力だからパターンを変えんとの」 「もしかして魂を宿らせた風の敵も作れますか?」 「う……ん、気配を察知する練習パターンはあるが、さすがに魂を見れる者は今はおらんからの」 次は気配察知の練習をしようとパンを頬張りながら考えていた。 「ところで朧と連絡を取ってみたんだが、狐は力を与えた者は無条件で監視出来るし、ましてや口外等しない。桜舞をつけたのは百合さんの為じゃと言っておるがどうする?」 狐は神という人もいるので、悪者にチクッたりはしないと思うが、桜舞のお化けは面倒だけど暫くは我慢するしかなさそうだ。 「社長も力貰ってるから恐らく見られてますよね、今までに不都合ありました?」 「特にない。まあこちらにも監視チームはおるし、情報網も広いから裏切られてもすぐに動ける。だが個人的に狐が付くのは百合さんが初めてだ」 「社長は基本放置されてますもんね」 桜舞が私についてるのは何となく『まだ未熟』と言われてる気がしていた。 朧は色々見えてそうだしモノホンの狐というだけあって考えも読めないが、魂を焼いたり使用人の女性に化けたり他にも何でもこなしてしまいそうだ。 「狐と言っても見た目は男性と変わらんし、覗きとかされたらすぐにワシに報告してくれ」 「はい……でも、彼は女性より食べ物に興味がある瑠里タイプですから心配はいらなそうです」 食べ終わると社長と部屋を出てロッカーで着替えを済ませ受付に戻った。 「お疲れ様。今回も色々あったけど無事で良かった、カラスの件は執行の手伝いしてくれたから給料つけてるからね」 「有難うございます」 気になる事もすぐに答えてくれる木村さんにさすがだと感心しながら、家まで小走りに帰った。
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