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「見て姉さん手裏剣に乗れたよ、これで空飛べるかも!」
器用に中心に乗った運動神経のいい妹は、徐々に地面から高く上がっていった。
最初はぎこちなかったが、慣れてきたのか徐々に上がり前後にも動き出している。
呆気に取られて様子を見ていると、瑠里はもう一つの手裏剣も回転させ始めた。
「姉さん、一つ余ってるから乗ってみれば?」
「出来るか!乗る前に足飛ぶわ!」
どう考えても草刈り機の刃が回ってるとしか思えないし、気軽にジャンプして失敗したら大惨事になる。
そんな命がけのチャレンジをするのはご免だった。
「乗るなら刃を何とかしてもらわないと無理だよ!」
クレームを叫んでいたが、瑠里は慣れたのか下に降りてくるとスタッと着地を決めた。
「なんかさ初めて一輪車に乗った時と同じ感覚、バランス取るの慣れたら大丈夫だって」
「やだね!そんな全体凶器に乗る位なら、地上から針金伸ばすわ」
「そんな弱音言ってたら忍者探偵のみんなに笑われるよ?」
「笑われたっていいわ!」
何かにつけ忍者探偵を出してくる瑠里のしつこさも少しウザい。
でももし瑠里が空飛ぶ手裏剣を自分の物にしたら、新しい発見が出来たという事になる。
何度かジャンプを繰り返し乗り方を教えてくれたが、初めて水に入るペンギンの子供のように二の足を踏んでいた。
瑠里が出した巨体手裏剣の一つは『はよ乗れや』と言わんばかりに空回転をしている。
部屋のドアがガラッと開いたかと思うと、社長が入って来て一瞬で手裏剣に興味を示す。
「やだっ何これ、超楽しそう!」
たまらずヒョイっと飛ぶと、器用に手裏剣の上に乗ってしまった。
「……えっ!?」
ペンギンの子を待ち切れなかった手裏剣は、爺さんを乗せて上下に動きだしている。
「楽しい~瑠里凄いじゃん、忍者探偵追い越したかもよ~」
誰役をしているのか分からないが、中途半端に若い子ぶった声が上から聞こえてきた。
「やっぱさぁ発想の転換?般若みたく頭堅くないしぃ、納豆初めて食べた人みたいなチャレンジ精神があるんだよね」
調子に乗ったキツネ二匹は言いたい放題な言葉を並べている。
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