85人が本棚に入れています
本棚に追加
「そもそもジジイは何をしに来た、練習の邪魔だから消えてもらえる?」
「おぅそうじゃった!二人に用事があって来たのスッカリと忘れておった」
話題が逸れ必死に便乗してくる社長。
ただこのキツネ面が現れし時は、必ずと言っていい程厄介な誘いか無茶なトレーニングと決まっている。
「実は鎌イタチの芭流からしつこく招待が姉妹に来ておる。断っとるが凱並みに返信が来るんで聞いてみようかと思っての」
「今回は行ってみます、色々聞きたい事もあるし勉強になるかと」
「ほぅ感心な事じゃ、よっぽど合宿が堪えたらしいな」
社長は少しの間手裏剣で遊んでいたが、飽きたのかいつの間にか部屋から姿を消した。
「瑠里が新しいヒント見つけただけマシか」
私はまだイメージも湧かないので、諦めて今日は帰る事にした。
受付で木村さんが日程について説明してくれたが、まずは二人で驚く。
休みの間に済ませて欲しいので『明日でいい?』と言われたからだ。
一泊二日の予定で鎌イタチの世界に行くが、もし何かあったらいけないので、母には多めの日にちを言っておく事にした。
今回の場所は村の集落なので、自宅付近にいきなり行けるらしい。
いつものように泊まりの支度は木村さんが担当してくれるので、手ぶらでOKという事だった。
家に帰ると母が誰かと電話で話をしている。
「えっいいんですかぁ?でも悪いしぃ……」
私達は静かにコーヒーをいれて会話の邪魔にならないようテレビも消し、イナリを膝の上において気を使った。
「あっちょっと待って、代わります。百合~、ハツさんから」
急に子機を渡されてビックリしていると久々に聞く声はいきなり笑っていた。
「行くんでしょ?お母さんはウチに来てもらってプチ紅葉旅行も計画してる。私も新作発表終わって暇しとるし。だた着ていく羽織りがないらしくて、私ので良かったら貸すけど?」
「いや……多分サイズ合わないので準備します」
電話を切ってから溜め息をついてドラム缶を見ると、出かける支度をコソコソしていた。
ハツさん宅に泊まったりプチ旅行に行くのは全く構わないが、着ていく服がないとアピールしたいらしい。
最初のコメントを投稿しよう!