84人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「今まで大きな事件は数える程しかないけど、公認だからその場で執行していいし、そこまで被害は大きくならない」
「でも危険がゼロでない以上、無色の私なんかが護衛に回るのは失礼だと思います」
「ふふっ『無色をキープしてる』の間違いでしょ?護衛の方が安全だって時も沢山あるのよ?特に女性だと相手も油断するし好都合」
人の世話がやける程自分に余裕があればの話だ。
「通常は金刺繍一人とヘルプ一人で大体立花の者が行くんだけど、水場の担当って蓮だから、コミュニケーシュンがねぇ」
人見知りというか無口すぎて私だって困った位の人だ。
社交性はゼロだけど、護衛にはいい気もする。
「滋もあんなだし空蝉屋と立花って同級生も多いんだよね、そこで月影姉妹にも護衛のヘルプに挑戦してもらおうと思って」
基本『人ならざる者の始末屋』に社交性を求める方がおかしいと思う。
条件に合ってるといえば、今のところ八雲さんか樹さん辺りだと思われる。
他の親族は顔も名前も知らないし、何人いるかも定かではない。
「新作の打ち合わせで、社長と長男と長女も一緒だがら、百合ちゃんご挨拶してみる?」
「えっ、こんな恰好でいいですか……てか、基本私も人見知りなんですけど」
「んふふっ、私に任せておいて」
手を繋がれロッカールームに入ると、いつものつなぎではなく上品なピンクの着物に着せ替えられた。
少しくすんでいてピンクと言っても抵抗はない。
軽いメイクと髪も結ってもらい、小さなかんざしを差すと『お嬢さん』に誤魔化せた。
「ホラ可愛い!これならいいでしょう?ささっこっちにおいで」
木村さんに手を取られ、品質管理部からパン工場へと繋がる通路を渡り、迷路のような社内を案内してもらう。
一人では絶対に戻れないので、帰りも付き添いお願いしますと伝えるとクスクスと笑っていた。
任務の前に顔合わせなんてした事もないし、そもそもヘルプの件を承諾もしていない。
断るきっかけを探していたのに、またもや騙された気分になった。
最初のコメントを投稿しよう!