85人が本棚に入れています
本棚に追加
電話を切ってから瑠里に相談すると、渋々頷いている。
確かにニット等は数枚買ったが、冬場上に羽織るコートやジャンパーはもう五年近く同じ物を着ている。
私達はバイトをしていた間、職場にボロは着て行けないので安い物を買っていたが、母はずっと我慢していた。
車を走らせ街に出ると、イナリはゲージに入れ瑠里とドッグカフェで待っていてもらい、私達は買い物に何軒か回った。
太ったクセにいつもMサイズから見る母にイラッとするが、肩幅はあまりないのでアウターはそれでも通用する時がある。
「わぁこれいいなぁ、うっ……高いね」
秋冬は厚手の物になるのでどうしても単価は上がる。
今の給料なら余裕で払えるが、母はそんなに貰っているとは知らないので、値段を見ながら自分の体型とも相談をして慎重に吟味していた。
「せめてアウターはそこそこの買っとけば?どうせ何年も着るんでしょ?」
ひざ丈位の薄手のコートがお気に召したようで、色々見ているが最終的にはそれを触っている。
羽織ると少しスッキリ見えるし、本人的にも嬉しそうだ。
「これ軽くて温かい、でもちょっと高いから勿体ない気がして」
今まで一万円を超える服は買っていないので母的に二万は厳しいらしい。
「色々羽織ったけど一番いいから決めたら?仕事頑張るから」
ついでに私達のニットも追加して買い物は終わった。
母は嬉しそうにショッパーを持ち、合流した妹もそれを見て満足そうだ。
イナリもドッグカフェでオヤツを買ってもらい、全員がニヤリとご機嫌で車に戻る。
その日はすぐにお風呂に入り、明日遅刻したらいけないからと早めに寝るよう急かされた。
次の日、母はいつも通り早朝から台所でゴソゴソ音を立てている。
寒くなると中々ベッドから出れないが、コンコンと部屋にノックして入って来たのは母とイナリ。
顔を舐められ、母にはちょっと起きてと言われ仕方なくパーカーを羽織ってリビングに向かう。
「私はもうすぐ出るから、ここにおにぎりとおかず置いてるからね」
「いや、メモしてくれれば分かるって」
伝言の為にイナリを使って起こされいい迷惑だったが、コーヒーまでくんであるので飲むしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!