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母が支度をする所を無駄に見せられ、イナリにドッグフードをやりガツガツと食べる辺りで、何の為に起こされたのか疑問が浮かぶ。
結局、その後玄関まで母達を見送る羽目になってしまった。
「じゃあ行ってきま~す」
「うん、イナリ、ドラム缶を宜しくね」
お出かけ用のベストを着せてもらい温かそうなイナリは母の腕でドヤ顔を決めている。
母はリュックに犬用のバッグを持ち、足取り軽く出かけて行った。
「見送り役……かい」
二度寝をしたら起きれないと思ったので、歯磨きを始めて着替えていると瑠里もリビングに入って来た。
「早いね……」
「いや、起こされたんだけ」
妹が支度をしている間おにぎりを食べたり、時代劇を見てボーっと過ごしていた。
「そろそろ行く?」
ウトウトしかけているとやっと準備が出来た妹に起こされ、職場に向かって歩き始めた。
受付では木村さんが少し心配そうな顔で私達を迎えてくれる。
「今回は付き添いなしだけど大丈夫?社長達も予定があるし、ワオンもお父さんの所に行ってるから」
「大丈夫です、むしろいない方が変な事に巻き込まれませんから」
着替えが済むとリュックと双棒を渡され、木村さんがパネル部屋までついて来てくれた。
「いい?何かあったらすぐ連絡入れるんだよ」
「分かりました」
冬用のつなぎにキャップ、リュックを背負い二人で扉を潜った。
そこは祖母宅のようにのどかな田舎で、稲を刈り取った田んぼと草むらには、すすきがいっぱいに生えている。
少し先にはセメントで出来た壁があり、木陰から覗いて恐らくあれが芭流宅だと予想が出来た。
「広そうな家だね、やっぱ金持ちなんかな?」
「まぁ一応トップだし、私達の前の家みたいだと経済的に大丈夫かと心配になるよ」
すすきをかき分け、門らしき場所につくと、呼び出しのインターフォンを押してみる。
表札等はなく、もし間違っていても確認のしようがない。
「はい、どちらさま?」
声は女性だったので、私も他所いきのトーンでインターフォンに向かって話した。
「月影百合と瑠里ですが、芭流さんはいらっしゃいますか」
ガチャっと音がすると、門を開けてくれたのは二足歩行のイタチ人間だった。
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