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「ごめんね……旦那は又どこかで飲み歩いてて戻ってないけど、まぁ上がって」
恐らくこの人が奥さんらしいが、花柄のブラウスに紺色のもんぺ姿なので、おばあちゃんの格好を思い出してしまう。
石畳の先には昔ながらの開きタイプの玄関があり、中に入るとすぐそばの部屋からは囲炉裏が見えた。
「私は芭流の嫁のマサノ、まーちゃんって呼んで」
囲炉裏の部屋に案内されると炎はフェイクできちんと暖房が入っている。
大きな木のテーブルの近くの椅子に座るように言われ、キョロキョロと見ながら隣同士に座った。
お茶と沢山の饅頭を用意してもらい、スプレーを振って早速頂いた。
「んっ美味しい、何個でもイケますね!あんこも皮も美味しい」
二個目を食べながらそう言うと、まーちゃんは嬉しそうにこの地域の名物だと教えてくれた。
「芭流はいつもどこかに飲みに行って帰って来ない時が多いの、絶対女のいる場所なんだけどさ」
愚痴を挟みつつ自己紹介がてらにまーちゃんの事も話してくれた。
刃物屋さんだけどメインは工場生産をしてて、日用に使う物を販売をしているらしい。
経営は殆どまーちゃんがしていて、芭流はオーダーが入った時に刀を作ってるらしい。
話しを聞いてる途中視線を感じ後ろを向くと、襖の隙間から小さい瞳とぶつかった。
「あぁ、その子達は孫なの」
手招きすると二人のイタチ人間の子供がちょっとビクビクしながらまーちゃんの方に歩いてくる。
「ダメ息子でね、二回も結婚してつい先日子供が生まれたっていうのに、女遊びが原因で愛想尽かした嫁が子供置いて出て行ったんだよ」
まーちゃんは襖を開けると、まだ赤ちゃんの子を抱いて部屋に戻って来た。
「百合達は若そうだけど子供はいるの?」
「いえっ、まだ結婚もしてません」
その前に彼氏もいない状態だと追加したい位だ。
まーちゃんはベルトを持って来ると私に巻きつけ、イタチ人間の赤ちゃんを前に固定し始めた。
「えっ、えっ!」
焦る私に練習になるからと強引に預けられる。
子供も抱っこした事ないし、まして初抱っこがイタチ人間の子だとは夢にも思ってなかった。
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