年の瀬に

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◆◇◆ 12月。 その日は会社で忘年会をやると言う。 皆で駅に向かっていると、誰かが声を上げた。 「あれ? あの子まだいるんだ? やっぱりなんかの撮影なのかな?」 声が向けられた方を見た、誰かが「綺麗な子ー」と言ったのが聞こえた。 「……裕子……!」 見間違う筈がない、街灯にもたれて立っている裕子がいた。 俺の声に気付き、一瞬嬉しそうな顔をしたがすぐに「ヤバイ」と言う顔になって走り出そうとする。 「待て! お前がなんでここに……!」 追い掛けて捕まえた、逃げる気なんて無かったのかもしれない、あっさり捕まった。 「上山くんの知り合い?」 女性社員が声を掛けてくる。 「はい、妹です」 言うとみんなが騒めく、似てないからだろうか、おまけにこの金髪だ。 「こんなとこで何してる?」 俺はきつい口調で聞くが、裕子は答えない。 「この子、夕方からここにいたよ? 二時間前、俺が得意先から戻る時には」 外回りの社員が教えてくれた。 「いや、綺麗な子だから、何してるのかなと思って、気になって」 微かに顔を赤くして答えた、そうか、そんなに目を引くのか。 「済みません、こいつまだ小学生なんです、家まで送ってきてもいいですか?」 言うと、またもや騒めく。 「小学生!? 見えないね、大人っぽい!」 確かに。この一年近くで更に身長も伸びて、スタイルもぐっと大人びた。 あの日触れた胸は、女のそれ言える程になっていると判る。 「家、横浜だよね! そりゃお兄ちゃん、心配だわ! 送ってあげなー」 二次会、三次会に合流できたらしなねと連絡先を確認し、皆と別れた。 俺は俯く裕子を睨み付けた。 「何しにきた?」 「お兄ちゃんに逢いに、決まってるじゃん」 裕子は小さな声で答える。 新橋にある会社だとは言ってあったから、ここで待っていたのか。 路線も複数あって、改札だってひとつじゃない、逢えるかも判らないのに……。 目の前の金髪を撫でたい気持ちを抑える。 「一人でか? 危ないだろ?」 「大丈夫だもん……」 裕子はいきなり抱きついてきた、あの日より丸みを帯びた体で。 「逢いたかったんだもん……」 金髪が顎をくすぐる、その髪は冷え切っていた。 俺は抱き締め返したい衝動を、ぐっと堪えた。
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