年の瀬に

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◆◇◆ 翌日の職場は、裕子の事で持ちきりだった。 なんでも俺が戻るまで、事ある毎に裕子の話題があがったらしく、後から合流した人達が何事かと思ったようだ。 「妹さんの写真、持ってきたか?」 先輩社員の遠山さんに詰め寄られる。 「だから、持ってないですってば!」 二次会から合流した遠山さんには、なんで連れて帰った、写真も無いのかとなじられ続けた。 「今時スマホに写真も無いって、どういう事だよ?」 言われてみりゃ、なんで俺はあいつの写真を撮ろうとしなかったんだろう? 遠山さんの気迫に、昨日の忘年会は欠席した社員まで、他の社員に聞いて寄って来た。 「へえ? そんなに美人なんだ。俺も見たい、連れて来いよ」 「嫌ですよ。まだ小学生ですよ? 飲み会とかそんなものには……」 「年なんか、関係無い! そんなにまで隠したい妹さんかよ、是が非でも会いたいぜ」 「マジで一度見た方がいいですよ! 目の保養っすよ!」 一年先輩の畑さんが鼻息も荒く言う。 「でもなんで金髪? ハーフ?」 「いえ、しっかり日本人です。多分色素が薄いんじゃないかと」 しつこい時に使う言い訳だ、母の夢の話はしなくてもいいだろう。 「そういや夜目でも判るくらい、色白だったもんなー。あー可愛かったー、も一回会いてー」 遠山さんに会った方がいいとか言っといて、畑さんが会いたいんじゃ? はあ、しかし。 あいつがこんなに噂になるまでとは知らなかった。 そりゃガキんちょ達から、いじめられるわな。
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