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夏休みを終えて、東京へ帰ろうと代官坂を下る。 結局裕子は全然家にいなかった、静かな帰省となったなと思う。 ばったり、坂の麓に住む、高階母子と出会った。 「おや」 母の瞳さんに会うのは随分久しぶりだ、数年前の記憶のまま、あまり変わっていない。 やや後ろでレジ袋を両手に提げて立つ愛くんは、相変わらず表情に乏しいが、精一杯歓迎してくれているのは、子供の頃からの付き合いで判る。 「サツキ先生、お久しぶりです、相変わらずお綺麗で」 俺はペンネームで呼んだ。 「朋くんは変わったな、下手なお世辞を言えるようになって」 「それなりに世間に揉まれました」 「前はゆうちゃんの事ばかりに気を揉んでいたのに」 瞳さんには、小さい裕子を追いかけ回していた俺の記憶しかないようだ。
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