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ずっと人から忘れられていた物が、息を吹き返しまた輝き始めるのが好きだ。
そういう点も、採用される決め手になったらしい。
できあがったアクセサリーはネットで販売。
売り上げは私のお給料の一部になっている。
「そろそろ行くか」
店長の声に顔を上げると、時計はすでに一時を指していた。
確かにそろそろ、いい時間だ。
私が簡単に片づけをしているあいだに店長は眼鏡を外し、依頼品を確認していた。
神谷さんの依頼品は、初めて打ったホームランボール、だ。
「しかし、よくそんなもの手に入りましたね」
「いろいろこつがあるんだよ」
苦笑いの店長に私も苦笑い。
遺族のもとに訪ねていくことも多いが、胡散臭がられて警察を呼ばれることもあるって以前、店長は云っていた。
懐中電灯を片手に墓地を歩く。
私は夜目が利かない……というか、ふつうに見えない人間なので懐中電灯が必要だが、店長は裸眼だと不要らしい。
店長の眼は死んだ人間と同じ世界が見えるという。
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