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私が勤める店、le souvenirの主なお客様は生きた人間ではない。
死んだ人間……いわゆる、幽霊って奴だ。
ちなみに私は、幽霊が見えない普通の人間。
店長曰く、見える特殊な人間なんて一握りだからそいつを捜すより、見えなくても信じて真摯に対応してくれる奴のほうがいい、……らしい。
そして、お眼鏡にかなったのが私ってわけ。
そりゃ、最初は戸惑ったよ?
ドアベルが鳴って挨拶したら誰もいなくて、最後のほう、もごもごと消え入るように云ったら怒られた。
おまえには見えなくてもそこに確かにいるんだぞ、失礼だろ、って。
誰もいないのにお茶を淹れるのもわけわかんなかった。
けど、自動で動くペン、とか。
店長の仕事を見てるうちに理解してきて、いまではもう慣れっこだ。
「おはようございまーす」
勤務時間は夕方六時から朝六時まで。
店長のいないときは延長もあり。
昼間活動している方もいるが、やはり幽霊の活動時間は基本、夜。
立地と開店時間のせいで、生きてるお客様が来ることなんてほんとに稀、だ。
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