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「撫で斬りが次の持ち主を指定した。これは、違えられない約束だ。」
「約束?誰と?」
「初代と、ボク達とのだよ。」
夜魅の声は落ち着いているが、柊平は少しの寒気を覚えた。
「百鬼の鬼退治の話は知ってるよね?」
「百鬼の由来になった、鬼を斬ったって話か?」
「そう。その時に使われた刀がこれ。」
そんな物騒なものなのか。
鈍く光る刀身を見る。
「どんな約束なんだ?」
「それは…。どんな方法でもいいから、ボク達を送り返し続ける約束だよ。」
なら、この刀を準備して今から待つ客って言うのは、鬼?
「日本刀なんて触ったこともない。オレには出来ない。」
「柊平には拒否権無いって言ってるだろ。」
柊平の”柊”はヒイラギ。
壁に映る夜魅の影が、猫の耳が、角のように見えて落ち着かない。
「無理だ。」
「じゃあ、喰われるかい?」
柊平は夜魅をまじまじと見た。
「お前は、鬼なのか?」
「妖怪だって言ってるだろ。」
「化け猫?」
「猫又と言ってよね。」
一緒じゃないのか?と思わなくもないが、今は些細な問題だろう。
「とにかく、お客さん来るから早く。本当に喰われても知らないよ?」
それに関しては名前は護ってくれないのか?
あぁ、でも、この刀が武器になるのか。
柊平はさっきまでの拒絶がなかったかのように、自然に撫で斬りを手にとり、鞘へ収めた。
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