百鬼夜行路

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提灯を狐に渡すと、一行は中庭へ出る。 「じゃあ柊平、百鬼夜行路を開いて。」 「どうやって。」 夜魅は当たり前のように言うが、柊平は当然やり方を知らない。 「大丈夫でございますか?」 狐が不安そうにしているのは無理もない。 「撫で斬りを池の光ってるところに突き刺す。」 「それだけでいいのか?」 「それだけ。鞘は抜かなくていいよ。」 すごく簡単そうに言うが、なんだか夜魅がニヤニヤしているのは気になる。 「ああ、念願の百鬼夜行に加われる日が来るなんて。」 気にはなるが、狐がそわそわとそういうので、柊平は恐る恐る撫で斬りを池に突き立てた。 池の水面は、ゆっくりと円い波紋を描く。 その波紋が池の内縁に当たった時である。 光の洪水に、一行は飲み込まれた。 柊平が目を開けると、目の前に光る道が見える。 その路は遥か向こうに、提灯行列が賑やかに歩く姿があった。 「あれが百鬼夜行だよ。」 夜魅が足元で言う。 なら、この遥か長い光の道が百鬼夜行路というわけか。 柊平は光る足元を目でたどる。 ふと、立ち止まる狐が見えた。 「誰の許可を得て、この路を行くのか。」 低く威圧的に響く声がする。 声の主の姿は見えないが、狐は怯えたように固まっている。 「柊平、許可してあげて。」 「俺が?」 夜魅がうなづく。 「この路は、昔、百鬼が鬼を送った時に開いた路なんだ。だから、百鬼の許可がないと通れない。」 「誰の許可を得て、この路を行くのか。」 低く響く声がもう一度訊いた。 「百鬼が許可する。その狐を通してやってくれ。」 柊平は姿のない声に向かって言う。 「お前の名前は。」 声が訊く。 「百鬼柊平。」 「柊平、刀を抜いて。」 夜魅に言われ、鞘から撫で斬りを抜く。 「よろしい。当代主、百鬼柊平。確かに承った。」 声が言い、威圧感が消える。 狐が振り返り、また器用に礼をした。 「お世話様でございました。」 「気をつけて。」 柊平がそう言うと、狐は番傘をさし、もう一方には提灯を提げ、にぎやかな百鬼夜行に向かって歩いて行った。
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