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「帰りは?」
「抜き身の状態で足元に突き立てる。」
夜魅が言い終わるより早く、柊平は撫で斬りを足元の光る路に突き立てた。
また光の洪水に視界が覆われ、その眩しさが消えると、元いた中庭に立っていた。
「ああいうのは、先にちゃんと説明しろよ。」
柊平は夜魅を睨む。
「百聞は一見に如かずだよ。あんなん口頭で言っても分からないよ。」
澄ました顔で夜魅が言う。
そうかもしれないが、何やら釈然としない。
柊平は撫で斬りを鞘に収めながら、今日一番長いため息をついた。
とはいえ、一件落着である。
「そういえば、あの狐、なんで百鬼夜行に行ったんだ?」
「永く生きたんじゃない?」
夜魅は興味なさそうに答えると、さっさと四畳半へ入っていく。
永く生きた?
柊平は夜魅の2本の尻尾を見ながら、自分も家の中へ入る。
じゃあ、お前は?
とは、なんとなく訊けなかった。
池の中では、変わらず百鬼夜行から洩れ出る光が、ゆらゆらと揺れいた。
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