百鬼夜行路

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「柊平、今夜は泊まっていきなよ。」 ふいに夜魅が言う。 「どうした?急に。」 いつもなら、このまますりガラスのはめられた木製の引き戸に鍵をかけて帰る。 高校の帰りに立ち寄り、ほんの数時間座っているだけだ。 「お客さんがくるから。」 「これからか?」 「うぅうん。今夜。」 今夜? 「営業時間は何時までなんだ?」 日が暮れたら閉めていい。 そう聞いていた。 「そんなの、壮大朗の時には無かった。」 それって、よく聞くブラックなんとかでは? 柊平がテレビのニュースを思い出していると、夜魅が続けた。 「主が柊平に変わったから、週末だけにしようって壮大朗が言ったんだ。」 「じいさんが?じいさんは病院だろ?」 「今はね。行く前の話だよ。」 祖父は今週のあたまに体調を崩し、この辺りで1番大きな総合病院に入院している。 倒れたわけではなく、近所のかかりつけ医に診察に行った時に、そういう話になったらしい。 とはいえ、その時点では、柊平が店番を預かることなど決まっていなかった。 「常連客か?」 「の、紹介じゃないかな。」 週末の夜に来るんだから、そうなんだろうと思うが、何か釈然としない。 「入口のカギは?」 「閉めていいよ。来たら開ければいい。」 夜に子どもの留守番で開けっぱなしは物騒でしょ、と、夜魅は付け加えた。
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