21人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「柊平、今夜は泊まっていきなよ。」
ふいに夜魅が言う。
「どうした?急に。」
いつもなら、このまますりガラスのはめられた木製の引き戸に鍵をかけて帰る。
高校の帰りに立ち寄り、ほんの数時間座っているだけだ。
「お客さんがくるから。」
「これからか?」
「うぅうん。今夜。」
今夜?
「営業時間は何時までなんだ?」
日が暮れたら閉めていい。
そう聞いていた。
「そんなの、壮大朗の時には無かった。」
それって、よく聞くブラックなんとかでは?
柊平がテレビのニュースを思い出していると、夜魅が続けた。
「主が柊平に変わったから、週末だけにしようって壮大朗が言ったんだ。」
「じいさんが?じいさんは病院だろ?」
「今はね。行く前の話だよ。」
祖父は今週のあたまに体調を崩し、この辺りで1番大きな総合病院に入院している。
倒れたわけではなく、近所のかかりつけ医に診察に行った時に、そういう話になったらしい。
とはいえ、その時点では、柊平が店番を預かることなど決まっていなかった。
「常連客か?」
「の、紹介じゃないかな。」
週末の夜に来るんだから、そうなんだろうと思うが、何か釈然としない。
「入口のカギは?」
「閉めていいよ。来たら開ければいい。」
夜に子どもの留守番で開けっぱなしは物騒でしょ、と、夜魅は付け加えた。
最初のコメントを投稿しよう!