高鳴る胸に、『SAFE SEX』

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制服が冬服に変わった。 あれからほどなくして太一は退院し、数週間後には松葉杖も取れて普通に歩けるようになった。 まだリハビリで通院はしているけれど、来週からは俺たちと同じメニューで練習に参加することになっている。 退部届は監督の手によって破り捨てられ、俺たちは夏休み前のように笑ったりふざけたりしながら過ごしていた。 変わった事はひとつだけ。 「ちょ……待て待て待て」 「んー、待てない、少しだけ」 体育館の用具室で、太一にがっちりとホールドされる俺。 「まだ一年が残ってんだろっ」 「大丈夫。体育館の床は広いから」 練習が終わり、床掃除をする一年のキュッキュッというシューズの音が聞こえる。 二人でボールを片付けに用具室に入った途端、Tシャツを引っ張って顔を寄せてくる太一。その腑抜けたイケメン面から逃れようと、俺はエビ反りになってボールカゴを後ろ手に掴んだ。
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