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こんなに近くにいるのに、太一が遠い。
けれども触れた唇は暖かかった。
太一は生きている。
たとえ手の届かない場所だとしても、太一が存在してくれている。それだけでいいじゃないか。
身体を起こすとシーツの上にぽとりと染みが出来る。やべぇ、俺、また泣いてる。
太一が目を覚まさないよう、静かに背を向けて帰ろうとした。
「純太」
驚いて振り向いた俺の手首を、ガーゼが貼られた腕が掴んだ。
「起きてたのかよ!」
恥ずかしさで顔面に血液が集まってくる。
「へ、変な事してごめん。帰るから手ぇ離せ」
「やだよ」
掴まれた手首をぐいと引っ張られた。
「離せよ」
「やだってば」
手首を掴んだまま身体を起こそうとして「いてててて」なんて呻き声をあげるもんだから、俺は慌てて太一に向き直った。
「大丈夫かっ!?」
その瞬間、思いきり腕を引かれた俺は、太一の胸に転がり込んでしまった。そのままがっちりとホールドされて身動きがとれない。
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