【奇妙過ぎる店】

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…なるほどね…。 俺は、オッサンが話をしている間に幾分かの冷静さを取り戻していた。 死後の世界は『究極の幸福の世界』…だから、その事を知った生首達は穏やかな表情になった…。 そして、その生首を見世物にしている、この店の名前が『幸福堂』というのは、そういう理由か…。 そして、 「ハハハ…」 と、思わず乾いた笑い声をあげてしまった。 「よく出来たお話ですねぇ。それと、この生首だってよく出来てますね。一瞬、本物かと思っちゃいましたよ」 こんなもの、よく出来た蝋人形かマネキンの頭に決まっているではないか…物凄くリアルではあるが。 「おや?おやおやおや?」 と、オッサンが笑顔のままで言った。 「お客さん…。もしかして、この『者達』が全て『作り物』と、お思いなんですかい?」 「そ、そうに決まってるじゃないですか…」 と、マリアが初めて小さな声をあげた。 「だ、第一… この生首が全部本物だとしたら、物凄い死臭がすると思うんですけど…。 あと、肉なんかも腐ってズガイ骨だけになっちゃうんじゃないですか?」 うむ! 怖がりキャラのマリアにしては、なかなかに冷静な分析だな。 と… 『ふふふ…』 どこからか… 女の声が聞こえて来た。 「…え?」 俺は、自分の耳を疑った。 今、この部屋にいる女性はマリア一人きりのはずだが…。 『ふふふ…』 と…更に女性の笑い声が聞こえた。 すると!次の瞬間!!! 『キャハハハハハッ!!』 けたたましい女の笑い声が大音響で部屋中に響き渡ったではないか! 俺は! 声がした方に目をやり、思わず凍り付いてしまった! 何と! 棚の上に置かれた若い女の生首がカッと両目を見開きこっちをガン見しながら、狂った様に笑っていたのである!! その、あまりの恐怖に固まりまくっている俺とマリアに向かって、生首の女は大声で喋りだした。 『お客様方! アンタラは何も分かっちゃいないよ! 何?!死臭がするはずですって?!肉が腐ってズガイ骨だけになっちゃうはずですって?! お客様方は、このお方のチカラを知らないからそんな事が言えるのさ! 全く全く全く!ナンセンスな疑問だよ!ああ!可笑しいったらありゃしないよ!』
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