【奇妙過ぎる店】

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それに… 今日、俺が怖いのを我慢してここにやって来た理由は、他にも有る…。 その理由というのは…。 「うわぁ…レイジロウ(あ、俺の名前ね。本名は、吉岡礼次郎)。このお店、物凄く不気味ねぇ。確か、前に来た時は無かったわよね…」 と… やはり俺と幼なじみのマリアが心配そうな声を出しながら俺の腕にぎゅっと、しがみついてきた。 そう。 俺がここにやって来たもう一つの理由というのは、彼女…マリアとツーショットになれるという事である。 実は、ユウタロウと俺(レイジロウ)とマリアはガキの頃からの仲良しトリオ。 そして、以前から俺は、マリアに対して密かに恋心を抱いていた。 今日、俺が久しぶりにユウタロウに会う旨を彼女に伝えて誘ってみたら 「あ、私もユウタロウに会いたい!レイジロウ!私も行くよ!」 と、可愛い笑顔で俺について来てくれ、一緒にこの道を通る事になったのだ。 ユウタロウには、既にカノンさんというカノジョがいる。 確かにここは不気味な道だが、怖がりキャラのマリアを俺がカッコよく守って『男を上げる』絶好のチャンスではないか!とも、俺は考えたのだ。 「それにしても…奇妙な店だよな……」 と、改めて俺は目の前に建っているその店を見た。 『幸福堂』という名前とは全く似つかわしくない、不気味でひどく朽ち果てた外観。 それに… 事も有ろうに、墓地のすぐ隣で『幸福』だなんて、こんなある意味ふざけたネーミングの看板をでかでかと掲げるとは… 何て、奇妙…いや、言い換えるなら悪趣味とも言える。 不謹慎も、はなはだしいじゃないか…。 しかし、不謹慎であるからこそ… 逆に好奇心も、そそられると言うものだ…。 「ねえ…レイジロウ。 このお店って一体全体、何を売ってるんだろうね…」 と…マリアが、俺に問いかけてきた。 「さあ…。そんな事、俺にだって分からないよ」 と、俺は内心のビビりをひた隠しに隠しながら腕組みをして思案した。 そして、 「なあ。ちょっと入ってみようぜ」 と、少し虚勢を張って言ってみた。
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