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「あの…」
と、俺は恐る恐る聞いてみた。
「僕達、ここに初めて来たんですけど…このお店って何を売ってるんですか?」
すると…オッサンは、
「ほほぉ。さては、さては…」
と、何とも時代がかった物言いをした後に、自分のスキンヘッドをツルリと撫で上げ、
「お客さん。当店は何かを売ってるってお店じゃあないんでさぁ。
なにね。『ちょっとしたもの』をご覧頂き、その上でお代をご頂戴してるって訳でして…」
と、柔和な笑顔のままで言葉を続けた。
なるほど…。
ここは、お客に何か『見世物』を披露して見物料を取る店って事なんだろうな…。
「あの…。
『ちょっとしたもの』って…一体、何ですか?」
と、今度はマリアがオッサンに質問をした。
すると、オッサンは
「グヘッ」と、何とも独特な笑い方をして、
「そりゃあ、見てのお楽しみってもんでさぁね」
と、言葉を付け加えた。
「俺達…そんなにお金持っていないんですけど…」
俺は、尻ポケットの中の財布を反射的に手で押さえながら言った。
実は今日、俺はマリアに道すがら、いろいろとおごっていた。
マリアは遠慮したのだが
俺がたまには男らしい所を見せたくて半ば一方的に、おごったようなものなのだが。
それに…
これからユウタロウに会った後にだって、いろいろとお金を使うかもしれない…。
この『幸福堂』という店で、予定外の出費が発生するとは思っていなかったし、できればそういう出費は避けたくもあった。
と…
「ようがす!お代の事は、心配しないで下せぇ」
オッサンは、そう言うと、今、自分が出て来た真っ正面の扉のノブに手をかけた。
そして、
『ギッ!!』
と、再び不気味な音をさせながら扉を開けたのだ!
扉の向こうは…
何やら…
薄暗い空間が広がっている…。
「ささ!入った入った!」
と、どこか有無を言わせぬ感じのオッサンの気迫に負けた俺とマリアは…
恐る恐る、その扉の向こうへと、またもや(?)足を踏み入れたのだった。
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