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俺は!目の前に広がる、あまりの光景に!思わず、大声をあげてしまった!
マリアは…恐怖のためか、声も出せずに両手を口にあて、その場に凍り付いている。
「どうでがす?アッシの自慢のコレクションですぜぇ」
と、オッサンは物凄いドヤ顔で、自分の胸を『ぐいっ!』と張りながら、俺達の顔を交互に見た。
その…
部屋の四方八方に設置してある棚…。
その棚の上に…
びっしりと……
何と!
『人間の生首』が!!
所狭しと『陳列』してあったのである!!
数十…いや、百体くらいは有るだろうか…。
その生首の全てが
オッサンと同様にスキンヘッドで…
その『全員』が両の目を閉じ、どちらかと言えば穏やかな表情をしていた。
男もいれば女もいる。
若者もいれば中年や老人もいる。
まさに老若男女のおびただしい数のスキンヘッドの生首が…
びっしりと並んで置いてあったのである。
「どうでがす?なかなかに壮観でっしゃろぉ」
と、オッサンがドヤ顔のままで言葉を続ける。
「おっとおっと!おっとっと!どうやって手に入れたかだけは…聞きっこ無しですぜぇ」
オッサンは、更に続けた。
「実は、ここにいる『者達』は皆、最初ここに来た時は、こんな穏やかな表情じゃあなくて、そりゃあ物凄く醜く歪んだ顔をしておりやした。
まあ、人間の死に際の表情というものは、たいがいは『苦痛』や『苦悶』に満ちていますわな。
人間、誰しも死ぬのは嫌だ。死ぬのは怖い。
だから、人間は死ぬ時は、そんな苦しげな表情になるんですなぁ。
でも、それは死んだ後の世界がどんな所か知らないから怖いってだけのお話なんですせ。
死後の世界なんてものは決して怖い所じゃあございやせん。
むしろ、安らかで穏やかな時間を過ごせる究極の『幸福の世界』と言えるんでさぁね。
そこには、金持ちも貧乏人もいない。
落ちこぼれもエリートもいない。
イケメンもブサイクもいない。
受験勉強も無し。イジメも無し。借金地獄も無し。恨む事も悲しむ事も怒る事も無し。
アッシは、ここにいる『者達』全員に、その事を教えてやったんでさぁ。
そして、どんな人間でも死んだら等しく平等なんだって事を伝える意味で髪の毛を剃ってツルツル頭にしてあげたんですぜ。そうしたら皆、こうして時が経つにつれて穏やかな表情になって行ったという訳なんですわ」
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