きたかぜ

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―――――― ―――‥ ―‥ 「‥うん‥?」 窓から射し込む日差しに、駿一は目を覚ました。 眩しい‥朝‥? 静かだな‥。昨日の雪は止んだのか‥。 「ふぅ‥。」 体に残る怠さに、小さく息をつきながら、駿一はボーと天井を見つめる。 ‥彼女、今頃どうしてるかな? 昨日は無事に帰れただろうか‥。 会いたいな‥。 「‥柚月さん‥。‥好きだ‥。」 〈ドサッ!?〉 そんなふうに、はっきり君に言えたらいいのに‥。 「‥結城先輩?呼びましたか?」 「‥っ!?」 ふいに横から聞こえた聞き覚えのある声に、駿一は驚いたように起き上がった。 「柚月さん‥!?どうしてここに‥!?」 「あ‥ごめんなさい‥!?あの‥、お見舞い来たのですが‥。」 思いもよらなかった柚月の登場に、駿一は目をまるくして、彼女を見つめる。 日曜日なのに、わざわざ僕のために‥? 柚月さんに会えたのは、すごく嬉しいけど‥。 「ありがとう‥。でも‥なんだか悪いな‥。」 「いいえ。わたしが好きで来たんですから。」 「‥!?」 柚月の口から出た“好き”の2文字に、駿一は、へんに動揺して、顔が赤くなった。 「‥そういえば、結城先輩。さっき、わたしのこと呼びませんでしたか?」 「え‥!?まさか、聞いてたのか‥!?」 「いえ‥、ちょうど積もってた雪が落ちたみたいで‥、うまく聞き取れなかったのですが‥。」 「そ‥そうか‥。」 ホッとしたような‥がっかりしたような‥。複雑な気持ちで、駿一は肩の力が抜けた。 そんな駿一の気持ちも知らずに、柚月は再び聞き返した。 「なにか用事があったんですか?」 「いや‥いいんだ。ただの独り言だから‥。」 「そうなんですか‥?それならいいですけど‥。」 力なく答えた駿一の返事に、柚月は心配そうに、話しを続ける。 「結城先輩。まだ‥具合悪いですか‥?」 「いや、もう、だいぶ良いんだ。月曜日には学校に行けると思‥、っ!?」 ふいに近づいて来た柚月の顔に、駿一は驚きで固まったまま。 自分のおでこに触れるもう一つのおでこの温もりにドキドキしながら、目の前にある柚月の唇を見つめる。
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