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***
それからの帰り道は、二人で並んで歩いた。 笑顔も泣き顔も、すべてオレンジ色に染めて‥。
「ほら、もう泣くなって‥。」
「だって‥。」
あんな大失敗初めてなんだもん‥。
なかなか泣き止まないわたしの横を歩きながら、灯真くんは一生懸命慰めてくれる。
「あ‥。1番星‥。」
「え‥?」
ふいに空を見上げながら、灯真くんが話しかけてきた。
「‥ほんとだ。」
「‥知ってるか。星ってさ、世界のどこから見ても‥、同じ場所で光ってるんだ。」
「へぇ‥そうなんだ。」
「ああ‥。俺達が今見てる星をさ、外国にいる誰かも同じように見てるかもしれないんだぜ。不思議だな‥。」
「うん。そうだね。」
灯真くんの話を聞きながら、わたしの涙はすっかり渇いていた。
「フッ‥。泣き止んだみたいだな。おまえ。」
そう言いながら、灯真くんは、空を見上げていた顔をわたしの方に向き直し微笑んだ。
‥灯真くん。 もしかして、わたしを元気づけるために‥ ?
「ありがとう。灯真くん。」
灯真くんの優しさに、わたしは満面の笑顔でお礼を言った。
「その顔だ‥。おまえは‥、いつもそうしてろ。な?」
灯真くん‥? 優しく笑っているようなのに、なんだか寂しそう‥。
「灯真くん‥。なんか‥、遠くに行っちゃうみたい‥。」
「‥‥。」
ふいに言ったわたしの言葉に、灯真くんの顔から微笑みが消え、わたしから視線をそらした。
「‥俺、卒業したら留学しようと思ってる。」
「え‥。留学って‥。外国に行っちゃうの‥?」
「ああ。」
そんな‥。せっかく仲良くなれたのに‥、お別れなんて‥。
また泣きそうなわたしの頭に、そっと手を置き、灯真くんは再び話しかけてきた。
「泣くなって‥。言ったろ?どこにいても、同じ星が見えるって。」
「‥‥。」
「今見てる星が、俺達を繋いでくれる。」
灯真くん‥。
「‥うん‥。そうだね‥。」
今見上げてる、あのひとつ光る1番星が、灯真くんとの想いを繋いでくれるんだ。
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