古シャツ屋

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【プロローグ】 その奇妙な店は、古着のワイシャツ屋であった。 古着屋と言っても、一般人から買取を行っているわけではない。 また、店主が問屋から仕入れを行っているわけでもない。 ワイシャツ屋と言っても、多種多様な色・形のワイシャツが売られているわけではない。 また、自分のサイズが選べるわけでもない。 販売中の古ワイシャツは、いつだって1枚のみ。 その古着のワイシャツが売れると、暫く店のシャッターが下ろされ、新たな古着のワイシャツが入ると再びシャッターが上がる。 店の看板はない。 店の窓に、販売中のワイシャツが、ハンガーで吊られているだけのお店である。 なので、近所の人の間では、窓に掛かるワイシャツは、売り物ではなく洗濯物だと思われていた。
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