古シャツ屋

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【ピンク クレリック オックスフォード ポリ混】 司の想像通り、ウィングカラーのワイシャツも即売だった。購入者は結婚の予定のない男。サイズも合わないようであったが、白シャツフェチ、フォーマルウェアフェチ、匂いフェチの全てを満足させたようだった。 次に司が入手したワイシャツは、襟と袖が白く爽やかな印象を与えるクレリックシャツ。通常は水色が多いが、今回は薄いピンクのワイシャツである。生地はブロードではなく、オックスフォード地につき、少々暴れても皺にならないところがいい。 今こうやって、洗濯もしていない古シャツをハンガーに掛けているが、皺も見当たらない。 「おお、司。良いの仕入れたじゃん。俺のサイズかも?」 海人がハンガーに掛けられたクレリックシャツに飛びついた。 「首41じゃなかったかな?」 「ピッタリだと思う。試着してもいいか?」 「もち」 「おぉピッタリだぜ。聞いていい?どんな奴だったか」 「詳しくは言えねぇけど、その上にベスト着てたな。裏地が赤の」 「で?ネクタイもエンジか?」 「ごめいとう。色のセンスはよかったな」 「顔は?イケメンだった?」 「そりゃもう」 「買った!でも匂いはあまりしねぇな」 「汗っかきには見えなかったな」 「そか。でもいい。買う!これから暫くは、俺の勝負シャツとして使用するぞ」 「1万円だ」 「高けぇな。まぁいい。一目ぼれだし」 「いつもありがと」 「上客だろ?そんな上客からお願いなんだけどさ。次回の仕入れ、同行させてもらえねぇか?」 「どうしても、って言うんなら、仕方ねぇな」
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