古シャツ屋

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【仕入れ:就活生の白シャツ ポリ混】 「国際展示場で開催されている合同会社説明会にでも行くつもりか?」 就活生の白シャツを狙うと言った司の言葉に対し、海人が聞いた。 「いや。展示場だと目立つからな。新橋のコーヒーショップかな」 「何で新橋なんだよ」 「今日ビッグサイトで合同説明会があるんだけど、地方から来た就活生は、ゆりかもめで新橋行って、そこから品川経由で新幹線だろう。新幹線に乗る前に、新橋のコーヒーショップでダチと連絡取り合うもんなのさ」 「さすが、読みが深けぇな」 「だろ?」 「で、今日は暴力で脱がすのか、それともお金か?」 「んなもん、お金に決まってんだろ。地方のかわいい坊やが、東京で暴力浴びてワイシャツ脱がされた、なんてことになったら、その坊やはもう2度と東京に来ねぇかもしれねぇじゃん。優しいツラでお金払ってシャツをもらうのさ」 「でも、いくらイケメン坊やでも、貧乏学生ならワイシャツはスーパーの1900円ってとこだろ?それも何の変哲もない白シャツ。いくらで買うのか知らなけど、金で買う価値あんのか?」 「そこがいいのさ。貧乏学生。つまり白シャツも1枚しか持ってねぇ。その1枚のワイシャツを最悪1週間着たままってことだ。つまり、襟垢や袖の汚れも一級かもしれねぇけど、匂いも超一級ってことだ。二十歳やそこらの匂いだぜ」 「おかずになりそうだな」 「そうだとも」 「で、いくらくらい払うんだ?」 「そいつらのワイシャツが1900円程度だろうから、3000円で仕入れて10000円で売る」 「3000円貰えるなら、喜んで脱ぐだろうな」 「じゃぁ、そろそろ新橋に移動するか」 ***
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